【蔚山旅行記③】タクシーのおっちゃんの優しさがにほっこり

朝、ホテルの窓を開けると、空は灰色だった。今日も雨。風も強くて、観光日和とは言いがたい。

宿泊している東横INNは朝食付きだったので、せっかくだしホテルで食べることに。

…が、これがなかなかの試練だった。

東横INNが不便すぎる件

朝食時間は7時から10時。

7時すぎに部屋を出てエレベーターに乗ると、次々に宿泊客が乗り込んできた。

私の部屋は18階、朝食会場は1階。途中の階で何度も止まり、満員になってもなお止まり続ける。部屋数が多いのに、エレベーターはたったの2基。これにはもう、朝からうんざり。

ようやく1階に着いたと思ったら、今度は朝食バイキングに長蛇の列。

「外でパンでも買って部屋で食べたほうがよかったかも…」と心の中でつぶやきながら、仕方なく列に並んだ。

料理は韓国の家庭料理風で、味は悪くなかった。でも、人の多さと窮屈さで、ゆっくり食事を楽しむ余裕はなかった。

無料とはいえ、明日からはもう利用しないと心に誓った。

食後、部屋に戻るにもまたエレベーター地獄。

1階から18階まで、何度も途中で止まりながら、ようやく部屋へ。朝から疲れた…。

タクシーのおっちゃんの優しさがにほっこり

天気が悪いとはいえ、せっかく蔚山まで来たのだから、何もしないのはもったいない。

雨が降ったり止んだりする中、本屋を巡ってお目当ての本を探した。教保文庫になかったので、個人経営っぽい本屋さんへ。店主に尋ねてみたけれど、やっぱり見つからなかった。

テンションは上がらないまま、でも「何かしよう」と思い、クジラ博物館へ向かうことに。

カカオタクシーで呼び出すと、3分ほどでタクシーが到着した。

運転手さんは、優しい雰囲気のおっちゃん。

私が日本人だとわかると、ゆっくりした口調で話してくれて、聞き取りやすかった。

「韓国語上手だね。韓国に住んでるの?」と聞かれ、「日本に住んでいます。頑張って韓国語勉強したんですよ~」と答えると、娘を褒めるような口調で「一生懸命勉強したんだね~」と言ってくれた。

おっちゃんは江原道の出身で、IMFの影響で会社をクビになり、それからタクシー運転手になったとのこと。

その話しぶりがあまりにも穏やかで、心に染みた。

クジラ博物館はちょっと微妙だったけど

タクシーで約20分。目的地のクジラ博物館に到着。入場料は2000ウォンとお手頃。

館内は、クジラに興味がある人なら楽しめるかもしれないけれど、正直、私にはちょっと物足りなかった。展示はあるものの、そこまで見応えがあるわけでもなく、さらっと見て終了。

近くに「クジラ文化村」という施設があったので、そちらにも足を伸ばしてみることに。

雨のせいか、観光客はほとんどいない。静かな空気が漂っていた。

文化村は入場料が必要だったけれど、そこまで気分が乗らなかったので、外から眺めるだけに。敷地の外にあるカフェが目に入り、ちょっと休憩することにした。

注文したのは、カフェモカとティラミス。ティラミスは思ったより大きくて、なんと6000ウォン。安いのに美味しい。カフェモカも香りがよくて、雨の冷えた体にじんわり染みた。

ケーキとコーヒーを味わいながら、静かな店内でまったり。蔚山に来てから、初めて「ホッと一息つけた」と思える時間だった。

旅先のファーストフードはジャンクな安心感

外に出ると、雨は相変わらず。

さっきまでカフェでまったりしていたのに、急に雨脚が強くなって、風まで吹き荒れてきた。まるで台風みたい。蔚山の天気には、もううんざり。

ホテルに戻って、しばらく大学の授業を受ける。雨音を聞きながら、画面越しに講義を聞く時間は、旅先とは思えないほど日常的で、ちょっと不思議な感覚。

授業が終わっても天気は回復せず、「このままホテルにこもるのもなぁ…」と思いながら、近くに図書館があることを知り、お目当ての本を探しに行くことに。

蔚山メトロポリタン図書館は、想像以上に大きくて立派だった。静かな空間に入った瞬間、少しだけ気分が落ち着く。

でも、探していた本はやっぱり見つからず。残念。

帰り道、ロッテリアで夕食をテイクアウト。

なんでだろう。普段はあまりファーストフードを食べないのに、旅先で疲れていたり、めんどくさいと感じると、つい頼ってしまう。

ホテルに戻って、Netflixを流しながらハンバーガーを頬張った。ジャンクな味が体に染みる。

「体に悪いな」と思いながらも、どこか懐かしくて、ちょっと安心する味だった。

今日は観光らしいことはできなかった。

でも、雨の街を歩いたことも、カフェでゆっくり過ごしたことも、ホテルでハンバーガーを頬張ったことも……

そんな「何でもない時間」こそが、旅の一部なんだと思う。